「とても回復したようには思えないわ、ハリー。倫理主義者という感じも全然しない。まるで、ただたんに…」女が両腕を広げる。「わたしを取り戻したいだけみたい。そういうことを考えるのはもうやめて、ね? 悲しすぎるもの。わたしはもう行かないと…」
ヒューマニズム、国際主義、福祉国家の〈イノセンス〉であるドロレス・デイがあなたのほうに顔を向ける。手に旅行鞄を持っており、何やら急いでいる雰囲気だ。
話者: 27
完敗だ。完全に私たちの負けだ、ハリー。責任なんてどうでもよかったんだ。おまえがまったくの無力だったことこそが問題だったのだ。この女や自分に対してはおろか、何に対してもなんの影響力もなかった。だからあの飛行船にも乗せてもらえなかった。彼女なしのおまえは異常者でしかない。
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いい考えだったとは思う。だが、彼女は“首なし〈FALN〉の乗り手”を受け取ることで、返礼の義務が生じると感じたのだ。それも、もはや望まない形での礼をな。だから拒絶した。その結果がこれだ… この小像を使ったアイディアは詰めが甘かったということだ。
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「ねえ、ハリー。これは夢なの、それがわからない? わたしは今ごろミローヴァにいる。これがいつのことだったと思ってるの?」女が周囲を見まわす。「1年、2年、ひょっとしたら5年前かもしれない」
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「また明日の夜、“ここ”に来ればいい。この夢はひとたび見はじめると、ずっと見つづけることになるから… 1週間のうちに、最低でも3回は。それにね、ハリー。どうやらほんとうにまた悪夢の始まりみたい。ここにレンタルビデオ店があるでしょう…」
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「わたしは若くて、息が止まるほどきれいで。〈トゥッティ・フルッティ〉のチューインガムのにおいがしてる… あなたに許してちょうだいと懇願した、あのときと同じ。初めてあなたと別れようと思ったあとのことだったわね、懐かしい…」
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「それはわたしとは別の誰か。わたしは彼女を裏切って、上書きしたの。でも、それで幸せになった。じゃあ、時間切れになったし、もうほんとうに行くから。10時20分の便に乗らなくちゃ…」女が身を翻す。