「ああ、また来たのね。ダイスをお探し?」
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「ただのジムじゃなかった、〈アルテミテップ・ボクシングクラブ〉… 一歩まちがったらハーブや犯罪に手を染めてしまいそうな若者たちを、そうしたものから遠ざけるための地域ぐるみの取り組みだったの」
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「心のやさしい男性よ… ズィームスク出身の。若いころは法にのっとった生き方をしていたわけじゃなかったみたいだけど、だからこそあのジムをつくりたかったそうなの。それまでの人生に対する償いだったんでしょうね」
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「駄目だったわね。それどころか、マルティネーズにおいて、若者たちを取り巻く環境はさらにひどくなった。ある時期から、下の階のサンドバッグには神経薬が詰まってるなんて噂が流れはじめたくらい」
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「〈スリップストリーム〉っていう会社が作ったものよ。それまでのローターブレードの製造から方針を変えて、スキー板をつくるようになったころ、最高責任者が“休暇”を取ったの… 会社のお金を全部持ってね」女は手の上にあごを休め、いたずらっぽい笑みを浮かべている。
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「正直、わたしはけっこうおもしろいと思ってるの。〈トゥルーラ〉か〈ティウムティリ〉か〈カシュト・コル〉か、彼の今の勤め先に心当たりはないけれど、今もそこから“休暇”を打診してるんじゃないかと思って」
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「もちろん違法だわ。でも、ビジネスの世界では決して珍しいことではないでしょ。何より、〈スリップストリーム〉はもう過去のものよ。残った資産も47年に廷吏たちに差し押さえられたし。なのにどうしていまだにスキー板やブレードがここに置きっぱなしになってるのかしらね」
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「ありふれた内容だと思うけど… いろいろと新しい事業計画を練っていて、戻ったあとでそれらに着手するのが今から楽しみだ… みたいな」女は満面の笑みを浮かべるが、それもあなたのうしろに控えているキムの顔が眼に入るまでのことだ。
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「でも〈スリップストリーム〉はもう過去のもの。残った資産も47年に廷吏たちに差し押さえられたし。なのに、どうしていまだにスキー板やブレードがここに置きっぱなしになってるのかしらね…」