会話 · メジャーヘッド
話者 · 28
「民主主義を掲げる民族国家など眼中にない。やつらは遺伝子的に凡庸な者しか生み出さない。この星の地表に存在するものは、セメノ=アレオパガイト人率いる超大国があまねく支配することになる。聖なるセメナインの地から、北方のカトラの高原にいたるまでのすべてをな」
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「レヴァショール人のことだ… “Aタイプ”と醜悪なるるつぼのちょうど中間に位置する。いろいろ混ざりすぎていて、よし悪しの区別をつけづらい。貴様らが挑んだ堕落への革命は、この星の8万2000年におよぶ歴史の中で、人類が犯した唯一にして最も偉大なる過ちだった」
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「その革命のことなら俺も聞いたことがある。過ちも確かにあったが、あれは正しいことだった。あんたの認識はまちがっている」
「革命はグラードを経由してレヴァショールにやってきた。ツァーラアト病を患ったジャガイモ狂いたちが運んできた、文字どおりの“病”だ。頭頂葉と前頭葉に孔があくプリオン病。脳を柔らかいスポンジ状の塊に変え、認知症、幻覚症状、偏執症を引き起こす…」
「つまり、あの革命は“破滅へといざなう集団悪夢”だったのだ。遺伝的なものだったはずのプリオン状態が、コイコからオクシデント人に伝染したのだからな…」男は自分の理論を再考するように沈黙する。「だが、あれは性交渉による感染ではなく、貿易ルートやジャガイモの苗の主成分である酸から伝染したものと考えられる」
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「その革命は一部の堕落した左派の略奪者たちがしでかしたことだ。レヴァショールの人間が全員でやったことじゃない」
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「未熟者のまなこには、コイコはピンクがかった白に見える。まるでハム・サンドイッチのような色にな。だが、やつらの瞳を見れば、俺の言っていることがわかる…」男は賢者のような聡明さをたたえ、眼を細める。「実に曖昧な色をしているからな。肌にしてもそうだ。不健康なうえに汗をかきやすく、灰のようだ…」
「ピンク色は何世紀ものあいだ、怒りに任せて戦いに明け暮れた挙げ句、〈アル・グル〉に溺れ、堕落にいざなう“煙草”などという草を吸っていた代償として、文化的支配を受けつづけた者たちに現われる特性だ… また、ジャガイモを食いつづけたことも当然影響していることだろう」
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「“Aタイプ”にはセメナイン人、アレオパガイト人、そしてオクシデント人が当てはまる… 当然“モーン”は含まれない。モーンどもは重度の皮膚炎を患っていて、もはや笑みを浮かべることもできなくなっている。乳糖不耐症であることも大きな特徴だな。これは禁じられた行為を続けた結果、よく見られる症状だ…」
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「遺伝子プールの退化により、スターズカナールやフレデフォートといったモーンの街では、不届きなストリートパレードが開催されるようになった。そこでは誰もが木靴を履き、緑色の小さなタッセルのついた帽子をかぶる」
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“モーン”とは、ゴットワルド人の血を引く第一世界の人々を指す蔑称だ。彼らは決して皮膚炎を患っている者たちばかりではないし、スールやウーフのようなカトラの民たちのほうが、よほど乳糖に対する耐性が低いことで知られている。
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「モーンどもは、オクシデント人種の純度を極限まで高めた結果といっていい… あのタッセル狂いの文化もな。禁じられた行為を続けた結果、誰からもまともに相手をしてもらえない、乳糖不耐症の下位人種が生まれたのだ」
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「ヴェスパー人とメッシナ人。それと、黄金のピサンティック海のそばに街を築いた古代メテオ人。スル・ラ・クレのシュレーヌ人に、北ケーニヒシュタイン人… 彼らにはみな、“Aタイプ”人種の傾向が見られる」
「規模の大きいムンディ文明の担い手としては、ほかにメスクが挙げられるが… やつらは英雄的人種に名を連ねるには肌が黄色すぎるし、油性が高すぎる。確かに暴力的で、領土や権力を拡大したがる一面もあるが、先天的な問題を抱えているからな…」男は自分の顔の上に指で線を引いてみせる…
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「やつらは皮脂を過剰生産する。それが脳にまで浸透するから、“エル・マリアッチ”などという音楽を聴き、挽肉中心の毒性のある食べものを口にするのだ。そしてその結果、またさらなる皮脂が生産される」
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「アレオパガイト人はイルマラー砂漠の覇者たる種族だ。セメナイン人は、このアレオパガイト人の末裔でもある。我々はイルマラーからインスリンデに渡る、かの“伝説の大移住”を経てこの地にやってきた。乳糖不耐症で、モーンなどというお荷物を抱えているオクシデント人どもより、何千年もまえにこの場所にたどり着いていたのだ」
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「アレオパガイト人は流線型の長い頭をしている一方で、セメナイン人は力が強く、中胚葉型だ。前者はスーパーイソラたるペリカーナッシスの時代より、絶対的な開祖の地位にある。あの細長い脳には古代の叡智が詰まっているのだ…」男は黙り、その美しさと神秘に酔いしれる。
やがて男は言葉を続ける。「一方、後者は完成されていて、高い適応力を誇る種だ。このふたつをかけ合わせると、セメノ=アレオパガイト人、もしくはセメオパガイト人という超優良種が生まれる… 以上だ。この世界にそれ以外の“Aタイプ”は存在しない」
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「セメナイン人はこのインスリンデ諸島の先住民であり、南方の島々に住んでいる…」男は南の海の向こうを示す。「そして、俺もまたセメナイン人だ。〈幽霊島〉にあるウルンブイールの民の血を引いている」
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「ちがう。それはサーラヴァ、イースット、バシールでヒミアリド人の奴隷を引き連れてシミターを振りまわしていた負け犬どもだ。そこには大きなちがいがある。そのころ、アレオパガイト人は断食をしつつ、領土の拡大に励んでいた… 貴様らは西の砂丘を一度も突破していない」
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「それができたら死体を降ろすのを手伝ってくれるか?」