節足動物がシーッ、カチカチッと音をたて、下あごらしき触覚を伸ばし、ふたたび挨拶してくる。あなたはその真下から、白く巨大な甲殻の手肢を見あげている。小さな眼には、とくに何も映っていな…
話者: 30
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もう一度、生き物の手肢に震えが走る。唐突に息を吹き返した生き物は、まるで一度止めたレコードがふたたび鳴りはじめるように、祈るような動作を再開する。小さな黒真珠のような眼も、じっとあなたを見据えたままだ…
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眼には崇敬と好奇心が満ちている。軌道上をまわりつづける星に似た崇敬、あるいは父神の周囲を飛びまわる主天使に似た崇敬が。そして、好奇心は、炭酸飲料の砂糖を味わう、どこにでもいるハチの好奇心と似ている。
パッシブ: 5
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生き物の手肢に震えが走る。唐突に息を吹き返した生き物は、まるで一度止めたレコードがふたたび鳴りはじめるように、祈るような動作を再開する。小さな黒真珠のような眼も、じっとあなたを見据えたままだ…
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触角がかなりの高さからぶらさがっている。震える手で、あなたは左のひげの先端にほんの少しだけ触れる。その瞬間、甲殻がくるくると巻きあがる。まるで毒を持ったツタのようだ。指先に触れたそれは冷たく、くすぐったい…
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「よお。俺はハリー。自分が誰なのかよくわからないんだ…」
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無脊椎動物が立ち止まる。大鎌のような腕を振り上げ、小さな頭を傾げている。頭は口を囲うようにして融合したプレートで形成されている。それは一瞬、彫像のように固まったかと思うと、かちっと音をたて、ふたたび動きだす。
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(ささやく)「クーノ。こいつ、泡を吹いてるぞ」
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沈黙が落ち、またかちっと音が鳴る。泡の色がゆっくりと濃くなっていく。まるで焦がしたキャラメルのような色だ… 何も食べていないのに、昆虫は咀嚼するように口器を動かしつづけている。そして小さな泡がひとつ、またひとつと破裂しはじめる…
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「行ってしまった…」キムが北を見て言う。その手には意味もなくカメラがぶらさがっている。