「ああ、また来たのね。ダイスをお探し?」
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「いたずらに遭ったと考えるほうが自然じゃない? まったく、最近の子たちは…」女が首を横に振る。「わたしたちにも子供だったときがあるのに、今じゃひたすらに恐ろしい存在だわ。人と手を取り合うことを知らない」
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「ええ、“アンドロギュノス・オーランド”だったかしら。確か、そんな名前だったと思う。このへんではあまり繁盛してなかった… 中性的な髪型は労働者階級の男性たちには不人気だったみたい。店名自体に怯えている節すらあった」
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「少なくとも、それなりの魅力はあったわ。若いデザイナーの多くは、レースと革を合わせただけのものを“オリジナル”だと主張しているような体たらくだし」女はシンプルな作業服の裾をズボンの中にしまう。
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「ええ、アトリエの人たちも知らなかったみたい。プロデュースしていたコレクションに用いた素材のひとつが、“キチン”といってね。そのキチンはオクシデントで生産されていて、甲虫の羽から抽出するものらしいの」
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光景が眼に浮かぶようだ… 時間の経った小便が染みたズボンを穿いた、小柄で病弱な老人。そんな男が作業机のまえで背中を丸めて、脚がこわばった憐れな狸に詰めものをしている。何もかもが悲劇的だ。
パッシブ: 2
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「あらあら。あの伝説の〈レヴァショール・アイスシティ〉ね… ひとつ聞かせてあげちゃおうかしら!」女が笑って身を乗り出す。手は膝に置かれた状態で、ネタを披露したくてたまらないスタンドアップ・コメディアンのようだ。
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「そこはマーケティングに関して比較的“革新的”なものの見方をしていた男性ふたりが経営していたところでね。あの熊も彼らのアイディアのひとつだった。そういう“アイディア”がほかにもあるんだけど、聞きたくない?」